著者の黒柳徹子さんと言えば、テレビの「徹子の部屋」、「世界ふしぎ発見」などで活躍し、ユニセフ親善大使としてもよく知られていますね。
長寿番組「徹子の部屋」の司会では、どんなゲストの方にも歯に衣着せぬお話で、ゲストの興味深いお話を引き出してお茶の間を楽しませてくれています。
作家としては、エッセイをメインに多くの作品を発表しています。
そんな黒柳徹子さん自伝的物語である「窓際のトットちゃん」は1981年に講談社から出版されました。
全て黒柳徹子さん本人が自筆し、日本国内での累計発行部数は800万部を突破。
日本国内において「日本で一番読まれた本」としても有名ですよね!
ここでは「窓際のトットちゃん」のあらすじや、読書感想文にするときのおすすめポイントなどを見ていきましょう!
窓ぎわのトットちゃんのあらすじ
物語の始まり
トットちゃんが通っていた伝統的な学校での出来事から始まります。
「お宅のお嬢さんがいると、クラス中の迷惑になります。よその学校にお連れください!」
小学校に呼び出された母親が、担任の先生にそんな風に言われたことを思い出します。
バイオリニストの父親を持つトットちゃんは、公立小学校に入学しましたが、授業中に窓から通行人に話しかけたり、机のふたを気が済むまで開け閉めするなど落ち着いて授業を受けられないことから、規則に縛られた教育に馴染めず、1年生の途中で学校を退学させられてしまったのです。
その後、母親が何とか探し出した自由が丘のトモエ学園に入学します。
トモエ学園は革新的な教育方針を採用した学校で、電車の車両を教室に使っているというユニークなところ。そこでは、先生たちが生徒たちの個性を大切にし、自由な発想を奨励していました。
リトミック教育(リトミック:19世紀末~スイスの音楽教育家が開発した音楽教育の手法)や校外学習を取り入れた教育を行う全校生徒50人位の私立学校で、子どもたちの興味や個性を尊重したユニークな学校でした。
席も時間割も自由です。その日の気分で好きな席に座り、おのおののペースで勉強しました。
校長先生の小林宗作先生はトットちゃんと初めて会った日、トットちゃんの話したいことがなくなるまで4時間近く話を聞いてくれました。そして、「これで、君は、この学校の生徒だよ」と告げたそうです。
そんな大人ははじめてだったので、トットちゃんは嬉しくて、安心感と暖かさを感じました。
トモエ学園に登校が始まる
翌日からトットちゃんはトモエ学園に登校します。
誰からも起こされない前に、もうソックスまではいて、ランドセルを背負って、みんなの起きるのを待っているほど、学校へ行くのが楽しみになっていました。
- 大好きな友達の山本泰明ちゃんとのやり取り
- 『海のものと山のもの』のお弁当のお話
- 大切にしていたお財布をおトイレに落としてしまった話
- 将来は「スパイ」になってやろうと思ている話
などの多くのエピソードの中で、トットちゃんは自分の才能を開花させ、周囲の友達や先生たちと素晴らしい経験を重ねて、友情や愛情、喜びや悲しみ、そして人とのつながりの大切さを学んでいくのです。
校長先生はトットちゃんと会うたびにいつも「君は、本当は、いい子なんだよ」と言ってくれました。
校長先生はいつでもトットちゃんの心の支えとなり、トットちゃんが自分の道を見つける手助けをします。トットちゃんが過ちを犯した時でも、校長先生は優しく叱り、そしてトットちゃんが素晴らしい子であることを褒め称えます。
世間では第二次世界大戦が進む
一方では、トットちゃんたちの生活の中に、戦争が見え隠れするようになります。
トットちゃんの家の近所に住むお兄さんたちも毎日のように出征し、空にはアメリカの飛行機が現れて、爆弾を落としはじめていました。
そしてB29からいくつも焼夷弾が落とされた夜、トモエ学園は焼けてしまったのです。その様子をじっと見つめていた校長先生は、隣に立つ息子に「おい、今度は、どんな学校、作ろうか?」と声をかけます。彼の子どもに対する愛情と教育への情熱は、学校を包む炎よりもずっと大きかったのです。
その頃、トットちゃんは東北に向かう疎開列車の中でした。校長先生がいつも言ってくれていた「君は、本当は、いい子なんだよ」という言葉を忘れないと誓い、いつかまた、すぐに校長先生と会える日が来ると思うと安心して眠りにつくのでした。
トットちゃんはこのトモエ学園で得た自由な心と経験を胸に、戦争や困難な状況に立ち向かっていきます。
「窓際のトットちゃん」は、個性を大切にし、自由な心で生きることの大切さを伝える感動的な物語となっています。
【8選】読書感想文におすすめのポイント解説
物語はおもに次の6個のカテゴリーの様子が書かれています。
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学園の教育の様子
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学園の行事
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学園周辺や登下校時のできごと
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小林校長先生のこと
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クラスメイトのこと
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家族、ロッキーのこと
また、現代では当たり前のように知られ、習い事の定番にもなっている「リトミック」ですが、当時は珍しいものでした。校長先生の小林宗作は「日本におけるリトミックの第一人者」といわれています。
トモエ学園では、リトミックの授業は毎日おこなわれていたそうです。
「窓ぎわのトットちゃん」の作中でも、講堂のステージの上で、校長先生が弾くピアノにあわせて生徒が手足を動かし、気持ちよさそうに飛び跳ねる様子がいきいきと描かれていますよ。
読書感想文を書くとすれば次のポイントについて書いてみるのも良いでしょう。
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この本を選んだ理由は?
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こどもの個性と教育のありかたについて感じたこと
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トットちゃんは「トモエ学園」の校長先生との出会いによって大きく人生が変わりました。そのことについての感想や持論
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寛大なお母さんや、小林校長のような人に出会わなかったのなら、トットちゃんはどのような人になっていたのか?
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受け入れてくれる人の価値について思ったこと
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自分がもしトットちゃんのような立場だったら?と想像し、自分だったらと考えてみる
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他人と違うことの価値について
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この本を読む前と読んだ後と何か変化したことはあるか
また、この本を通じて「読書の大切さ」や「読書の価値」「本を書き残す価値」などについての気づきや感想を含めるのもよいでしょう!
東京都目黒区自由が丘にかつて存在し、著者である黒柳徹子さんが通学したトモエ学園。
黒柳徹子さん自身の小学生時代についてはもちろんですが、トモエ学園におけるユニークな教育方法(リトミック、廃車になった電車を利用した教室など)や、校長である小林宗作の人柄が描かれ、また、黒柳の級友も全員実名で登場する、完全なノンフィクション作品となっています。
初恋の相手には、物理学者の山内泰三さんも登場していることでも有名ですね。
ちなみに「トットちゃん」とは、当時の本人が舌足らずで名前の「徹子(てつこ)」を「トット」と発音していたことにちなんでだそうですよ!
また、「窓ぎわ」とは、出版当時はリストラ予備軍のサラリーマンのことを「窓際族」と呼び出した時期であり、著者自身がトモエ学園に移る前に登校していた区立小学校で、チンドン屋を呼び込むために、授業中に窓の傍に立っていたことなどから付けられたものである。
小林先生は、いつもトットちゃんに「君は、本当は、いい子なんだよ」という言葉をかけてくれました。
あとがきには「その言葉がどんなに自分のこれまでを支えてくれていたか、先生に出会わなかったら、悪い子のレッテルを貼られコンプレックスにとらわれたまま大人になっていたのでは」と書かれています。
現代の教育や社会にも通じる普遍的なテーマを持っており、トットちゃんの成長を通じて、読者は人間関係や情操教育の重要性、そして互いに理解し合うことの素晴らしさを学ぶことができるのではないでしょうか。
いわさきちひろの美しい表紙絵および挿絵とともに、難しい漢字にはふり仮名が振ってあり文章も分かりやすいので、子どもから大人まで、一緒に読んでみるのも良いかもしれませんね!
また、2023年3月20日には、劇場アニメ化されることも発表されました。2023年12月8日に公開予定ということなので、そちらも楽しみです!
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