「アドルフに告ぐ」は、手塚治虫さんによる歴史漫画作品です。
第二次世界大戦前後のドイツ・日本を背景に「アドルフ」というファーストネームを持つ3人の男たちの数奇な運命を描く、手塚治虫さんの後期の代表作となっています。
ここではそんな「アドルフに告ぐ」のあらすじについての解説や、今なお多くの人に読まれ、話題となり続けるその魅力を、3つの魅力に分けて考察してみましたので、さっそく見ていきましょう!
「アドルフに告ぐ」のあらすじ解説!
まずは「アドルフに告ぐ」に出てくる主人公や、あらすじについて見て見ましょう!
主人公と主人公を取り巻く重要登場人物
・峠 草平(とうげ そうへい):本作の狂言回し(語り手)
・アドルフ・カウフマン
・アドルフ・カミル
・峠 勲(とうげ いさお)
・小城 典子(こしろ のりこ)
・ヴォルフガング・カウフマン
・峠 由季江(とうげ ゆきえ) / 由季江・カウフマン(ユキエ・カウフマン)
・エリザ・ゲルトハイマー
・アドルフ・ヒットラー
・アドルフ・アイヒマン
など
あらすじ1:始まり
物語は1983年、イスラエル。1人の日本人男性がひっそりと墓地の一角に佇み、ある墓の前に花を供えるところから始まります。
彼の名は主人公の一人である峠草平。40年前、3人の「アドルフ」に出会い、そしてその数奇な運命に立ち会うことになった彼が、全ての終わりを見届けた今、その記録を1冊の本として綴ろうとしていました。
あらすじ2:1936年、ドイツ
ベルリンオリンピックに沸いていたドイツ。協合通信の特派員であった峠草平のもとに、ベルリン留学中の弟・勲から電話が入り、会うことに。しかし、翌日、取材で遅くなってしまった草平が、勲のもとに駆けつけた時に見たものは、何者かに荒らされた勲の部屋。そして、勲の惨殺死体でした。
すぐさま警察が駆けつけるも、不可解な出来事が重なり、勲の存在自体が抹消されてしまう事態に。 草平は真実を求めようとしますが、全ては勲の隠した秘密を追うゲシュタポの罠であったのです。
あらすじ3:1936年ごろ、日本
日本の兵庫県神戸市に二人のドイツ人少年が住んでいました。日独混血のアドルフ・カウフマン、そしてユダヤ系ドイツ人のアドルフ・カミルの二人です。
境遇が異なる二人は親友同士でしたが、ドイツによるユダヤ人迫害が二人の関係にも影を落としつつありました。
ある日カミルは「ヒトラーがユダヤ人である」ということを盗み聞きしてしまい、カミルの残した告解メモからこのことを知ったカウフマンは、父ヴォルフガングにそのことをうっかり訊ねてしまいます。そしてナチス最大の機密であるその情報を阪神大水害の中、体調を崩しながらも追っていた父ヴォルフガングは激昂し、肺炎を悪化させて病死してしまいます。
父ヴォルフガングの遺言でドイツに戻ったカウフマンは、反ユダヤ主義が国是となったドイツで成長していきます。当初は反ユダヤ主義に対する違和感を感じていたカウフマンですが、徐々に反ユダヤ主義に染まっていき、不法入国者として逮捕されていたカミルの父を任務で射殺するななどヒトラーー直々に褒賞され秘書として側近く仕えるなど出世の道を歩んでいくことになるのです。
その一方でユダヤ人の少女・エリザに好意を抱き、ユダヤ人狩りから逃れさせるために、親友カミルが住む日本に亡命させるなど、歴史に翻弄された人生を歩むのです。
一方、ドイツから帰国した草平は、弟の恩師である小城から連絡を受けることととなります。
勲は死の直前に、「ヒトラーがユダヤ人の血を引く」ということの明確な証拠となる文書を小城に託していたのです。しかし特別高等警察の監視下であった小城と接触したことで、草平は特高の赤羽警部に追われることとなってしいます。
そんなさなか、草平はカウフマンの母・由季江と出会い、思いを寄せるようになります。
文書を狙って来日したゲシュタポをかわした草平は、文書を小城の仲介を通して由紀江の友人である本多大佐の息子芳男に託しますが、スパイ活動に関与していた芳男は、それを知った父の手によって殺害され、隠し持っていた文書も、カウフマンに見つけ出されてしまうのです。
あらすじ4:第二次世界大戦末期
1944年7月、カウフマンはヒトラー暗殺未遂事件に関与したとされるエルヴィン・ロンメル元帥をかばったことから失脚し、ユダヤ人の強制移送に従事することとなっていました。
その後、日本に向かうこととなったたカウフマン、そして日本ではかつて自分が亡命させたエリザがカミルと婚約していたこと、母・由季江が草平と結婚していたことを知り、激しい怒りに捕らわれ、カミルと決裂してしまいます。
1945年に入りいよいよ激しくなる戦火の中、カウフマンは文書の捜索を続け、ようやく文書を発見したカウフマンですが、その日はヒトラーの自殺が日本で報道された日でした。
あらすじ5:戦後
カウフマンはパレスチナに逃亡しゲリラのもとに匿われ、家族を持っていました。しかしその家族はイスラエル軍の「アドルフ・カミル」率いる部隊によって殺害されたのです。
激怒したカウフマンは、反対するアラブ人の仲間に反撃までして街中にビラを貼り付けます。
そのビラには、「アドルフに告ぐ」とプリントされていました。
そして彼らは、最後の決闘を始めるのです。
その数年後、草平はもう年を取っており、彼の書く本にアドルフたちを登場させるために、カミルの墓参りにやってきます。また、カミルの妻であるエリザも、息子と2人で静かに暮らしているようでした。そして草平は、元記者の意地で、この本を書き上げたいと、その題名を2人に告げるのです。
同じ「アドルフ」というミドルネームを持つ、かつての親友同士の決闘、そして年老いた草平。
この物語は、どのように終わりを告げるのでしょうか。
その結末が気になる方はぜひ一度読んでみると良いかもしれませんね!
【魅力3選】手塚治虫の最高傑作と言われる魅力を考察!
「アドルフに告ぐ」は晩年の手塚治虫さんの作品で、当時は文藝春秋に連載された大人向けの作品でした。
最高傑作、と評価されることも多い作品ですが、その魅力はどんなところにあるのでしょうか?
魅力1、フィクションとノンフィクションが織り交ぜられた話の展開!
この物語は、ナチスの始まりから終焉までが、フィクションとノンフィクションを織り交ぜられて展開する歴史漫画作品です。
実在したアドルフ・ヒットラーは、自らの力でドイツの頂点に立ち、何千人もの部下を従えていながらも常に孤独を背負って生きてたということです。
そんなアドルフ・ヒットラーについてもフィクションとノンフィクションを併せて表現されています。
また、実在しないフィクションとして登場するカウフマンは、「ヒトラーがユダヤ人である」という事実を知っても、ヒットラーに忠誠を誓い続け、この時代に生きる、正にヒットラーにとって「思い通りの手駒」として生きることとなったのです。
一方、同じく架空の人物であるカミルは、日本を愛し、ユダヤ人であることに誇りを持つ優しい人物でしたが、後にユダヤ人の土地を守るため、アラブ民族と戦うことになります。
カウフマンもカミルも、争いのなかで生まれた恨みに支配されてしまい、数奇な人生を歩むことになってしまったことや、ヒットラーも含めた3人の「アドルフ」のそれぞれの人生の苦悩が描かれているのです。
魅力2、戦前~戦中そして戦後の風景のリアルな描写!
日本の場面では、作者である手塚治虫さんが青春時代を過した、戦前から戦中の関西地方の当時の風景や空気感がリアルに描かれています。
また、実際にあったこととして、ナチスの興亡やユダヤ人大量虐殺、第二次世界大戦、原爆の投下。また、ドイツの「アドルフ・ヒトラー・シューレ」など、実際に存在していた施設も登場し、リアルさを増しています。
手塚治虫さん自身が実際に戦争を体験していることが、この作品でのリアルな描写に大きく繋がっているようです。
人間の狂っていく怖さ。
手塚治虫さんの可愛い絵柄だからこそ読んだ人に衝撃を与えるのかもしれませんね。
魅力3、飽きないストーリー構成!
「ヒトラーがユダヤ人である」という機密文書の存在の仮説の元に描かれる物語。
始まりののミステリアスな展開から、読む人を一気に引き込み、軍やスパイや特高警察も登場するハラハラドキドキの中盤。
サスペンスのような終始飽きさせないストーリー構成も魅力の一つと言えるでしょう。
最初に登場する草平が、自分で、私は主人公ではなく狂言回しだと告げているところから引き込まれてしまいますね!
まとめ
ここでは「アドルフに告ぐ」のあらすじについての解説や、今なお多くの人に読まれ、話題となり続けるその魅力を、3つの魅力に分けて考察してみました。
「ジャングル大帝」「ブラックジャック」「火の鳥」など、バラエティ豊かな手塚治虫さんの代表作品として、一度は読んでみたい作品の一つと言えそうですね!
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